第53章 隣にいるのは君が良いな
今日のスケジュールを、頭の中でさらう。急ぎの事務作業は無いし、打ち合わせやアポイントも無い。
天のソロ仕事と付き人を、姉鷺に代わってもらえるならば、まぁ休めない事もない。
『……あ、もしもし。中崎です』
《あら、どうしたの》
『実は…今日、急なんですけど お休みを貰えないかと』
《本当に急ね。珍しいじゃない。何かあったの?》
『……風邪を引いたみたいで』
《あんた風邪なんか引かないでしょ。嘘つかないでよ》
『貴方は私の事を何だと思ってるんですか?』
あっさりと嘘を見抜かれた事に衝撃を受ける。さすが、姉鷺は鋭い。まさか女のカンとでも言うのだろうか。
『と、とにかく。これには深い事情があるんです。今日の天の付き添い、代わってもらえませんか』
《やーよ!アタシにだって予定があるんだから!》
大正論だ。これはもう諦めるしかない。Re:valeファンには申し訳ないが、明日の生放送で いつものカッコイイ彼らを拝む事は諦めてもらおう。私は出来ることをやった。
と、早々に諦めようとする私に、千は手を差し伸べた。そして、代わって?と告げた。
どうやら、私の携帯を所望しているようだ。何を言うつもりか知らないが、姉鷺と直接 話せば彼も諦めが付くだろう。
私は彼の手に、携帯電話を乗せた。
「もしもし……そう。お久しぶり。
あぁちょっとね、拉致した」
姉鷺が何を言っているかまでは聞き取れないが、電話口からは彼の声が漏れている。どうやら相当大きな声を出しているらしい。