第52章 D.C
【3日目・朝】
「…ふ、ぁ…。
ん?なぁ。龍と春人は?」
「カメラ引き連れて、2人でランニング」
「ふーん。
お、天。それ珈琲か?俺にもくれよ」
「自分で淹れたら?ボクをカフェの店員か何かと勘違いしてるの?」
「俺、カメラが回ってない時のお前とは、絶対に一緒に暮らせねぇよ」
—————
固定されたカメラの前を、私達は通り過ぎる。その後、少しの間カメラマンと並走した。しかし すぐに撮れ高に達してしまう。
ふと、気が付いた。サラシを巻いていると、普段より凄く走りやすいことに。これなら、まだまだ走っていられる。そう考えていたら、龍之介が言った。
「せっかくだから、もう少し走って帰らない?」
『いいですね。私も走り足りないと思ってたんです。スタッフさん達には、先に寮に戻っていただき、天と楽を撮っていてもらいましょう』
その旨を告げると、すぐにスタッフは寮へと向かってくれた。
「春人くん、ランニングは日課?昨日も、朝 走ってただろう?」
『気付いてたんですね、はい。ここ数年は、大体毎朝 走ってますよ』
「毎朝かぁ…偉いな。俺は、時間に余裕がある時だけ。沖縄にいた頃は、俺も毎朝…走ってたんだけど」
そう言って龍之介は、隣に広がる川の流れに目をやった。もしかすると、故郷の海を思い出しているのかもしれない。
川と海では随分違うが、龍之介の瞳はどこか懐かしそうだったから。
『あの綺麗な海を見ながら、砂浜を走るのは…気持ちが良いでしょうね』
私も川へ視線をやって告げると。龍之介は、そうなんだ。と、嬉しそうに答えてくれるのだった。