第7章 どうやって僕達を、楽しませてくれるのかな?
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「おいコラお前なぁ…っ」
翌日、私は怒りと呆れに暮れるTRIGGERからの攻撃にあった。
楽は私の頭を、両側から拳でゴリゴリと押さえ付ける。
『いたたたた』
「今度からは絶対に、出張とか先に現場行くときは俺達に言っとけ!チンゲンサイだチンゲンサイ!こんな事も知らねぇで社会人やってんのか、お前は!」
「それを言うならホウレンソウだ楽!」報連相!
「チンゲンサイって、一体何の頭文字なのさ」
「緑黄色野菜の話はどうだって良いんだよ!
とにかく分かったのかって聞いてんだ俺は!」
私がなんとか頷くと、やっと楽は頭を解放してくれる。
姉鷺を代わりに置いたのだから、何も問題はないと思っていたのだ。
『こんなに、怒られるとは思いませんでした…』
「あはは、楽は いつもは隣にいる春人くんがいなくて、寂しかったんだよな」
『…へぇ』
駄目だ。口元が緩む。
「龍、適当な事言うな、俺は寂しいとかじゃ」
「ネクタイ、シャツ」
楽の言葉を遮るように 天が口を開く。そして二言 謎の単語を落とした。
私と楽と龍之介の3人は、不思議に思い彼を見る。
「ネクタイの柄が、昨日と一緒。いつもは綺麗にアイロンがけされたワイシャツに皺」
な、なんと目ざとい天!この歳にしてその洞察力…。彼と付き合う女の子は、絶対に浮気が出来ないな。と そんな事をつい思慮してしまった。
「えっ、て事は、春人くん 昨日どこかに泊まって…」
ぼっ、と龍之介の顔が赤に染まる。
「な、…なっ、!」
「プライベートな事には口を出したくないけど、身だしなみくらいはちゃんとしていてよね」
ぷいっと天は顔を背けてしまった。
今度から、会社に代えのワイシャツを置いておこうと 心に強く誓った。
「春人、何だんまり決め込んでやが…。ん…?お前…普段からそんな匂いだったか?」
私に詰め寄った楽が、すんすんと鼻を鳴らす。
「何々?…ん、たしかにいつもと違う気が」
「だろ?この匂い…どこかで嗅いだ事あるような…」
2人して匂いを嗅ぎに近寄ってくるその姿はまるで大型犬だ。
『っ!!』
ついに天までもが私に近付いてくる。
咄嗟に距離を取った。鋭い天に嗅がれてしまったら、絶対にバレる!
…千のコロンの匂いが。