第52章 D.C
《おぉ勇者テンよ。そなたがここを訪れるのをずっと待っておった》
そう言って王は テン勇者に、こんぼうと300Gを手渡した。そして王様は続ける。
《今や悪の魔王は、この世界を飲み込まんという勢いで暗躍しておる。それを止められるのは、もはやお主しかおらん。
テン勇者よ、この世界を救ってくれるな?》
はい
▶︎いいえ
《そう言ってくれるな。テン勇者よ、この世界を救ってくれるな?》
はい
▶︎いいえ
《そう言ってくれるな。テン勇者よ、この世界を救ってくれるな?》
はい
▶︎いいえ
《そう言ってくれるな。テン勇者よ、この世界を救ってくれるな?》
「話が進まないんだけど」
「お前が頑なに世界を救おうとしねぇからだろうが!!」
「はは…天。今度は、はい。の方を選んでみたらどうかな?」
龍之介の助言に、天は不服そうだった。
「でも、常識的に考えておかしいと思う。赤の他人であるボクに、突然300円と木の棒だけを渡して、世界を救えって。あまりにも不条理じゃない?」
「ゲームに条理も不条理もねぇんだよ…頼むから、ゲームを進める努力をしてくれ…」
「ボクはゲームを進める気しかないけど」
自らのこめかみに手をやって、楽は続きを促した。
こんぼうを手にしたテン勇者は、さきほど自分をタコ殴りにしたスライミーに、リベンジマッチを挑む。そして、見事な勝利を収めるのであった。
「あ、見て。やった!ボクの勝ちだよ」
「「『……』」」
(可愛いな…)
コントローラーを手にして、眩しい笑顔を弾けさせる天。ただ雑魚敵の1匹を倒しただけとは思えない喜びようだった。
最中、私の頭には こんな事が浮かんでいた。
“ ゲーム経験値ゼロのアイドル 九条天に、RPGやらせてみた ”
これ…案外ウケるのではないだろうか。