第52章 D.C
自己が投影されるキャラクターに、名前を付けるところからゲームは始まる。とりあえず無難に、主人公は《テン》と名付けられた。
そして無事、始まりの町に降り立ったテン勇者。
こういうゲームの定石としては、まず町人などから話を聞いて回るのだが…
「あ、天…町を出ちゃうの?」
「俺はやめといた方が良いと思うぞ」
「どうして?」
町を出てすぐに、敵とエンカウント。見慣れたコマンドが並ぶ。
▶︎戦う
防御
逃げる
この3択を前に、天は2人に意見を求める。
「戦った方がいい?」
「まぁ、普通は戦うんじゃないかな?」
「でもお前今」
楽が何か言おうとしたが、天は《戦う》を選択した。しかし…
《テンはスライミーを攻撃!しかしダメージを与えられない!》
《テンはスライミーを攻撃!しかしダメージを与えられない!》
《テンはスライミーを攻撃!しかしダメージを与えられない!》
「……ねぇ、これ、壊れてるんじゃない?」
「だから、お前今 素手だろ」
《GAME OVER》
「スライミーに負ける勇者、俺 初めて見たよ…」
「え?これってボクが悪いの?」
「しゃーねぇな。俺が勇者様に、ありがたい助言を与えてやろう」
楽は大層 自信満々に、天へお告げを与えた。
「まずは、城に行って王様と会え!」
「……分かった」
あまりにゲーム経験値のない天は、しぶしぶ楽の助言に従う。
町の1番奥。そこに城はあった。始まりの町にあるような城なので、立派なものではなく可愛らしい規模のものだ。
城の奥の奥に、玉座がある。そこまですんなりと進んだ天は首を傾げた。
「アポとか取ってないのに、王様に会えるもんなの?」
「いちいちアポを取る勇者はいないと思う…」
「そうだ。勇者様は忙しいんだよ。顔パスだ、顔パス」
そういうもんなんだ。と呟いてから、テン勇者は王様に謁見する。