第52章 D.C
「なんだよ。お前、自分が嫌な事を俺達にやらせようってのか?」
『うーん…まぁ、嫌と言えば嫌ですかね。カメラの前に立つのは』
「あんた、ほんとにハッキリ物言うようになったよなぁ…!」
意地悪そうに口角を歪め、楽は私に詰め寄った。どことなく楽しそうに見える。道連れが出来て嬉しいのだろうか。
そんな彼の隣で、しゅんと項垂れている男が1人。それは龍之介だ。
あんなに寮生活体験を喜んでいた彼が、一体どうしたというのだろう。心配になった私が名を呼ぶと、龍之介は眉尻を下げて口を開いた。
「そうか…春人くんは、俺達との共同生活は気が進まない…か」
『え、あ、いや…べつに、そういう訳では』
「あっ、ごめん!こんな言い方をしてしまったら、君に気を遣わせてしまうよね!
違うんだ、俺が勝手に…春人くんとの生活を楽しみにしてしまっただけだから。本当に気にしないで?」
『あぁもう凄く楽しみですね!貴方達と寮で共同生活なんて最高じゃないですか!収録日が楽しみ過ぎてどうにかなりそう!』
俯いていた龍之介は、ぱっと顔を上向けた。さきほどまで項垂れていたのが嘘のように、満面の笑顔を見せてくれる。
「…あの子、龍之介みたいのに弱いのねぇ。これは発見だわ」
「「……」」
(なんとなーく不愉快…)
ともかく、春人参戦が確定。
姉鷺は、残りの各所を案内する為に 再び歩き出した。その背中に、メンバー達はついていく。
私は…
自室の扉に、向かい合った。