第52章 D.C
いよいよ、各自の部屋を見に行く。実際にその個室で、彼らは2泊3日の寝泊まりをすることとなる。
リビングから伸びた廊下に、ドアが並んでいる。
まず最初に見えてきたのは、楽の部屋だ。扉の色は、彼のイメージカラーであるグレー。さらにはト音記号まで施されている拘りっぷりだ。
「へぇ、凄いな。かなりTRIGGER仕様じゃねぇか」
『大家さんがTRIGGERのファンらしく。かなり自由にやらせてくれたんですよね?』
「えぇ。トントン拍子に話が進んで、打ち合わせも楽だったわー」
この建物の内装や、大家とのやりとりは、姉鷺に一任してあった。実は内観するのは私も 今が初めてなのだ。
楽は、これから自分が2泊する部屋の扉を押した。
モノトーン調で、落ち着いた内装。物は多くなく、シンプルな個室だった。姉鷺がメンバーに、必要な物があったら各自で持ち込むように伝えた。
「ボクの部屋の扉は、やっぱりピンクなんだ」
「そりゃね。ちゃーんとハ音記号もあるでしょう?」
室内は、さきほど覗いた楽の部屋とほとんど変わりがなかった。どうやら、中はTRIGGERイメージで統一されているらしい。
楽、天、と来れば、次に現れるのは龍之介の個室。カラーは濃紺で、勿論 へ音記号も記されている。
これで全員分の部屋を見終わった。
はずなのだが…。龍之介の扉の奥には、まだもう1つ扉が並んでいる。
その扉は真っ白で。さらには “ D.C ” の文字が明記されていた。私達4人は一様に、その扉をじっと見つめた。
「この扉って…?俺の部屋の隣は、物置か何かですか?」
「いやぁね、ここは春人ちゃんの部屋に決まってるじゃないの!」
『あぁ、私の部屋でしたか。わざわざ個室を用意して下さり ありがとうございま…
とは、なりませんよ…姉鷺さん…』