第52章 D.C
事務所からほど近い一等地。そこに、その建物はあった。当たり前だが、わざわざ今回の企画の為に建てた訳ではない。少しの間、拝借するだけだ。
しかし、中はしっかりとTRIGGER仕様にリノベーションさせてもらった。大家さんの許可を得て実行したのだが、それなりに金額はかかっている。
現場へ到着すると、そこにはバインダーを持った姉鷺が待機していた。
『お疲れ様です。進捗はどうですか?』
「もうバッチリよ!早く見て欲しくて待ってたんだから!ほら、早く中に入りましょ」
姉鷺に促され、私達は全員で建物内に足を踏み入れる。
バインダーを確認しつつ、中を案内してくれる姉鷺は、さながら不動産屋のようだった。
「思ってたより広いな」
「でしょう?ここは見ての通りリビングよ。明るい照明にウッドテーブル。直ぐ隣のスペースにはソファ席もあるわよ。テレビはそっちに設置してあるわ。
あとオープンキッチンだから、リビングの様子を見ながら料理が出来るの」
「オープンキッチン、いいですよね!」
「完全にアイナナ寮と同じ間取り。
ねぇ。キミ、こないだIDOLiSH7の寮に行ったのが、そんなに楽しかったの?これ完全に影響受けてるでしょ」
『う…ひ、否定はしません』
どうやら天にはバレバレだったようだ。
しかし、私はあくまでお題を提供しただけ。実際に選んだのは視聴者だ。なので確実に需要はあるはず。べつに、職権濫用など していない…はず。
「こら天。あんまり春人ちゃんをイジメないのよ。楽しくなりそうなんだから、いいじゃない」
なんと姉鷺が、私を庇ってくれた。珍しいこともあるものだと、感動してしまった。
私は後々、彼から衝撃の事実を告げられることになるのだが…この時はまだ、知る由もないのだった…