第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
「OHHHHHーーー!!」
「『うわっっ!!』」
ナギが突然、地面を指差して叫んだ。そのあまりの声量に、私も天も驚きの声を上げてしまう。
「うるさい!どうしてキミはそう声が大きいの」
『どうしたんですか…』
「ち、…ちっ、ちち…!」
「父?」
『乳?』
「NO!NO!!血っ!血、BLOODですっ!!」
ナギが指差した場所。そこには確かに、赤い何かがべっとりとこびり付いていた。私はすかさず身を屈め、その赤い物体に指をやる。
先程とは違い、今度はベタベタと粘度がある。これは…
『甘い…!』
「何故どうしてアナタはすぐ舐めますか!?甘い…!じゃありませんよ!」
「キミ、そんなだから虫の湧いたスルメも気付かないで食べちゃうんじゃないの?」
『これ、苺ジャムですよ』
指の腹同士を擦ると、粒々があるのが分かる。そして、この甘み。血なんてとんでもない。間違いなくジャムだ。果実を砂糖で煮詰めた、あのジャムだ。
「おーい、大丈夫か?なんか、ナギの凄い叫び声聞こえたんだけど」
大和の声だ。階段方向から3人が姿を現した。なかなか戻って来ない私達を案じ、迎えに来てくれたのだろう。
まだ最後まで見回れていないのが心残りだが。私と天とナギは、水やジャムの報告をする為に、3人の元へ歩き出した。
その時だ。
三月の大声が、暗闇を割いた。
「っ、おい!!後ろ!!」
私は、その声に弾かれるようにして振り返る。
暗闇の中に、たしかに何者かが立っている。雷が唸り、その光で一瞬 姿が浮き彫りになるが、逆光でよく分からない!
背後からは、駆け寄ってくる3人の気配。