第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
その時。私の携帯電話が震えた。バイブの音に驚いたナギが叫び声を上げる。それに対し、うるさい。と天は睨みを利かせた。
発信者は大和だ。私はすぐに応対する。
『はい』
《 窓が割れてたのは、こっちの階だった。割れた窓ガラスと一緒に、イカツイ枝が転がってたよ。風で折れて飛ばされた枝が、窓にぶち当たったんだろうなぁ 》
『分かりました。侵入者じゃなくて一安心ですね。私達もすぐ戻ります』
通話を切って、今の話を2人にも聞かせる。
「真相なんて、得てしてそんなものだよね」
「……NO. 事件はまだ、何も解決していません。
窓ガラスの件は、偶然のイタズラだったのでしょう。しかし、寮の玄関を叩いたのは?イオリが見た人影は?説明が出来ないこと、多過ぎます」
確かにそうだ。私も天も黙り込む。
念の為、1番奥の突き当たりまで 見回ることにした。何も異変がなければ良いのだが。
「!!
プロデューサー、これ」
そう言って天が、その場にしゃがみ込む。そして、懐中電灯で足元を照らし出した。
そこには…
「…なんでしょう、ぐっしょりと、濡れていますね」
「水…?」
その部分は、水溜りが出来たように濡れていた。私はその液体に指を浸す。サラサラとしていて、何の変哲も無い水のように見える。
そして、濡れた指を口元へ持って行く。
「「!?」」
『ただの水ですね。無味無臭です』
「ちょっと、普通は舐めないよね」
「春人氏…得体の知れない液体を、躊躇なく口へ入れるのはやめた方がいいと思います…」
普通の水か…もしくは…
『雨…』
「雨…?ということは、外から雨を運んで来た人間がいるってこと?」
『…もしかすると、この寮内に既にいるのかも知れません。土砂降りの外から侵入し、ずぶ濡れになった “ 何者か ” が…』