第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
「二手に別れましょう。
私と兄さんと二階堂さんは、この階を見回ります。中崎さんと、九条さんと六弥さんは 上の階をお願い出来ますか」
一織の提案に、頷いた。
『分かりました。くれぐれも、気を付けて下さい』
こうして、私達は上階へと向かうのだった。
ナギは、私の片腕を完全に占領している。
「本来であれば、男の手をこのように抱き締めるなど。想像するだけで寒気がするのですが…なぜか春人氏の手は、落ち着きます。手の甲もすべすべで、まるでレディの細腕のよう アウチっ」
「撫で回すな」
私の手をお触りしていたナギの顔面を、天が懐中電灯で照らした。
『天、ちゃんと前を照らして下さい』
「…分かってるよ」
この暗がりの中 頼りになるのは、天が持つ懐中電灯の光だけだ。足元と、少し先の道を彼は照らす。
「でも、意外だった」
『何がですか』
「キミは、お化けとかの類には強いんだね。彼みたいに、怖がるものだとばかり思ってたから」
そう言って天は、私にへばり付くナギを見た。
『霊的な物を怖いと思った事はありませんね。私は、生きた人間の方がよっぽど怖いですよ』
「そう。まぁ、そっちの方がキミらしいかな」
『…やっぱり…お化けとかを、怖がった方が…その、可愛げがあるんでしょうか』
「え?」
『な、何でもないです。忘れて下さい』
「……ふふ」
天は、意味ありげに微笑んだ。そして、こう続ける。
「可愛げ、あるよ。ボクにとったら。どんなキミでもね」
「…人を無視して、イチャイチャしないで下さい」
「なんだ、いたの?キミ」
「酷いです!ずっといました!!」
「そう。キミがいなければ、もっとイチャイチャ出来るんだけどね」
「NO!無事に電気が点くまでは、イチャイチャを禁止します!」
ナギはそう言って、より強く私の腕を掴んだ。