第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
『いつもの要領で、長い足を一本。特に注視することもせず、端から口へ放り込みます。
しかし…何かがおかしい。味は普段と大差ないのですが、食感が、いつもとは違うような…。
ぷちぷち、ぷちぷちと。小さな硬いタネのような食感が、咀嚼する度に歯に伝わってくるのです。
私は、おかしいな、おかしいな…と思いながらも食し続けました。
そして、やっとプレイがキリの良いところまで来ました。そこでようやく、私は重い腰を上げたのです。
立ち上がり、携帯を手に取りました。そして、ライトをオンにして スルメに光を当てたのです。すると、そこには なんと…』
ゴクリと。皆んなの喉を鳴らす音が聞こえた。私は、満を持してオチを投下する。
『びっしりと、黒い虫が張り付いていました。スルメに群がる、無数の虫。そう。私が 種みたいだと思っていたのは、全て虫だったのです。私はなんと、虫をぷちぷちと噛み潰してい』
「気持ちわりぃーー!もうやめろ!!頼むから!」
「怖い話…というよりも、普通に気持ち悪い話ですね」
和泉兄弟が、ついにストップをかけた。この状況に1番怯えていたナギは、思っていた話と違ったのか 安堵しているようだった。
隣にいた天が、首を傾げて問う。
「キミが虫嫌いになったのって、それが原因?」
『いえ、虫はもっとずっと昔から嫌いです。まぁ、さらに虫嫌いを加速させた出来事に変わりはないてすが』
大和が、パン!と両手を打ち鳴らした。
「おし、じゃあ次は俺が話をしてやるよ。本格的な奴いくから、覚悟しろよ?」
ハードルを上げた大和は、蝋燭を自分の顔のそばに持って来た。赤い光に、下から照らされる表情。やはり雰囲気が出る。
隣に座っていたナギが、そっと私の手を握った。
『…なんで私なんですか』
「アナタは、ワタシと同じ護身術を身につけていると聞いています。どうか、お願いです。もしも男のお化けが現れた際には、何を置いてもワタシのことを守ってください」
『お化けって…戦って勝てるんですかね』
本気で悩む私をよそに、大和の話が始まった。