第51章 腹いせに変なとこ触ってやる
「ま。順当に考えたら、イチだろうな。上達が早いのは」
『は?天でしょう』
牌を手積みしながら、私と大和の視線がバチっと交錯した。
「いやいや。うちの子の視野の広さ、舐めてもらっちゃ困るわー」
『うちの子だって、鉄壁のポーカーフェイスです』
「「……」」
(腹黒いって言われなくて良かった)
私達は、互いの言い分を譲らなかった。まるで、自分の子供の自慢をする親同士のそれだ。
そんな2人を、天と一織は冷えた瞳で見つめている。
どうでもいい。と 声に出さなかったのは、彼らなりの優しさだろうか。それとも口を挟む気すら起きなかったのだろうか。
『いいでしょう。そこまで言うのなら、この勝負タッグ戦にしましょう』
「乗った。プロ雀士になるのは、うちのイチだ」
「いつからそんな話になったんですか!?」
天は、一織の隣で溜息を吐いた。私はそんな彼に耳打ちをする。
“ この勝負に勝ったら、次のオフは1日一緒にいましょう ” こう呟いた。
「ちょっと、九条さんからも何か言って下さいよ…」
「プロ雀士を目指さない人間は黙ってて」
「えぇ!?」
ギラリと光った天の瞳を見て、大和がこぼす。
「何を言ったのか手に取るように分かるけど、どうしよう。すげー不愉快」
何はともあれ、私達の勝負は幕を開けたのである。