第50章 お慕い申し上げておりました
『パスって、こんな事も出来るの知ってます?』
「WHAT'S!?」
私は、ワイヤーを伸ばす。しかし、壁や塔を狙ったのではない。目の前に迫った敵に貼り付けたのだ。
そして、自分が飛んでいくのではなく 相手を引き寄せる。
ワイヤーに捕まっている間、敵は身動きが取れなくなる。ただ、なすすべもなく引き摺られるだけなのである。
こうなってしまえば、自慢のチート能力は使えない。
ショットガンに持ち替えていたPeach。無気力化された敵に向かって、至近距離からぶっ放す。
敵が力尽きた瞬間、画面いっぱいに CHAMPIONの文字が出る。
「GG*23 ーーー!!」
『ふぅ…』
私がマウスから手を離した瞬間、Peachから連絡が入る。ゲーム内のチャットではない。リアル電話だ。
『…もしもし』
《 ねぇちょっと!!さっきのって絶対チーターだよね!もう最悪じゃない!?ほんっと、なんであぁいう事するかなぁ!》
『しかし、百さんお得意のショットガン炸裂で倒せたじゃないですか』
《 あれ?なんで敬語?あ、もしかして今って春人ちゃんモード? 》
『はい。実は今アイナナ寮で』
《 へぇ!いいなぁ、この嵐がなかったらオレも飛んで行くのに!くそぅ!》
『では、また。GG 』
《 GGー!》
Peachこと百との通話を終わらせる。静かになったナギの方を見ると、彼はある画面を見て固まっていた。
ある画面とは、私のバッチ一覧画面だ。ここには、私が過去 獲得したバッチを全て見る事が出来る。
「OH…信じ、られません」
ナギは、口元を覆って感嘆の声を漏らした。
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*23 GG…Ipexプレイヤーの間で広く使われる、挨拶のような言葉。good gameの意。