第50章 お慕い申し上げておりました
残り部隊も少なくなって来た。今の時点で、既にナギのスコアは超えているだろう。しかし、当然目指すはチャンピオンだ。
「…扱いの難しいパス*19 を見事に使いこなしています」
『パスは キャラコンの難しさで、いちにを争うキャラですが。慣れれば、この機動力は驚異ですよ。逃げの場面でも、距離を詰めたい場面でも、ワイヤーを使って一気に距離を稼げますからね。
何より、使ってて楽しい…』
ワイヤーを壁や屋根に貼り付け、ビュンビュンと飛び回る。私が先行して動き、隠れた敵を見つけ、Peachと共に挟み撃ちにする。
そうこうしてダメージを稼いでいくうち、残りは後1チームとなった。行動可能範囲*20 ももうかなり狭い。
私達は2人身を寄せ合い、遮蔽物の影で息を潜めて敵の位置を探る。その時だ。
ありえない方向から、スナイパーの弾が飛んで来る。その攻撃は、Peachの頭を貫いた。
「『!!』」
なんと、壁をすり抜けて弾丸が飛んで来たのだ。このゲームにおいて、遮蔽物を通り抜ける攻撃などありはしない。
従って、敵は…
「チーター*21 ですか」
『…みたいですね』
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*19 パス…Ipexのキャラクター名。ロボットキャラ。腕から出したワイヤーを、壁や塔などの高所に飛ばし、空中を飛び回れる。進撃の◯人の、立体機動装置をイメージしてもらえば分かりやすい。
*20 行動可能範囲…ゲームは、時間経過と共にフィールドが徐々に狭められていく。外周から中央に向かってリング状に縮まり、最終的には小さな円形の範囲だけが残る。そこに生き残りのプレイヤーが自ずと集まるかたちとなる。
*21 チーター…チートを使うプレイヤー。非公式なイカサマを使う輩の総称。大抵の場合、ゲームの公平性が大きく損なわれ、まともな勝負が成り立たなくなる。