第50章 お慕い申し上げておりました
残った敵の体力をギリギリまで削る。しかしトドメは刺さないで、Peachとの合流を急ぐ。
「WHY?なぜ倒さないのですか?」
『殺さなければ、体力を回復して、さっき倒した味方も蘇生させるでしょう。そして再度 私の前に現れてくれれば、またダメージを稼げる。
大して強い敵ではなかったので、またいつでもヤれます。生かしておいた方が後々 美味しい。
仮に私が手こずるほどの相手だったなら、いま確実に仕留めてます』
ナギは何も答えなかった。そろそろ気付いたのかもしれない。私がそれなりのプレイヤーだということに。
それからPeachと合流。彼の腕なら問題ないと踏んでいたが、無事に生きていてくれて何よりだ。
早速アイテムの交換をする。私はショットガンの弾を渡した。
「だからショットガンの弾を集めていたのですね!」
『はい。私はショットガンは使いませんが、Peachは好んで使うので。彼のために』
パートナーの得意武器を把握しているのは、何もこちらだけではない。Peachはスナイパー用のスコープを手渡してくれた。
『あ、しかも6スコ*17 だ。ナイス』
「Peachさんもまた、アナタのスナイパーライフル好きを分かっているのですね。ナイスコンビネーションです」
私達のコンビネーションは、この程度ではない。これからそれを、ナギに披露しようと思う。
手頃なターゲットを発見すると、まずはPeachが単独で突っ込んでいく。大きな足音を立て、ショットガンで攻撃。
「危ない!あれでは、自分はここにいるぞ!と 言っているようなものですよ!?」
『それが狙いです』
Peachの襲来に驚いた敵は、堪らず遮蔽物から頭を出して応戦する。ここで、私の出番だ。
高い位置からスコープを付けたライフルを使い、狙いを定めてズドンだ。
「 FANTASTIC !! OH MY GOD !!」
『これが、私達のいつものやり方なんです』
「Peachさんは、あえてヘイト*18 を買っていたのですね!」
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*17 6スコ…6倍スコープの略。他にも2倍や4倍、8倍があり、それぞれ見え方が異なる。プレイヤーによって何倍スコープが使いやすいか好みがある。
*18 ヘイト…直訳で、嫌われる、憎まれる の意。ヘイトを買う とは つまり囮になる。という意味である。
