第50章 お慕い申し上げておりました
とりあえず、最初はナギと同じ作戦だ。迷わず敵がはびこる激戦区へと降りる。
今回の勝負で競うのは、総ダメージ量。ガンガン戦って、敵を倒さなければいけない。従って、敵を探している時間はロスなのだ。
アイテムボックスから、遠距離用のスナイパーライフルを選び取る。
「スナイパーですか。渋いですね」
『好きなんですよ。遠くからヘッショ*12 キメるのが。どこから撃たれたのか、訳もわからず倒れていく敵を見るのもね』
「アナタの性格が、少し分かってきたような気がします…」
もう1つチョイス*13 した武器はマシンガン。これは近距離戦の時に使う。
他にも投げ物*14 や、回復アイテムや防具なども手に入れた。運の要素が強く絡む序盤。ここまではかなり上手くいっていると言っていいだろう。
「仲間と離れ過ぎています」
ナギが呟いたその時だった。こちらに敵パーティが接近している。耳を澄まし、人数と方角を探る。どうやら相手は2人のようだ。
この状況で1番避けるべきは多対一。自分の位置から近い方の敵にダッシュする。急いでまずは1人、倒さなければならない。
このゲームの基本。それは、敵からの射線を切る*15 こと。しかし、タイマンならば私にそれは必要ない。
「NO!突っ込み過ぎです!」
素早くマシンガンに持ち替えて、敵の目の前に躍り出る。体を左右に揺らして、とにかく被弾ダメージを抑える。そして、敵が弾切れを起こしリロードするタイミングで銃弾を浴びせる。
見事ワンマガ*16 で敵を倒し切った私に、ナギが叫ぶ。
「 AMAZING !!!」
『残りの敵の足音聞こえないんで。静かにしてもらえます?』
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*12 ヘッショ…ヘッドショットの略。最も効率的に敵を倒す為の攻撃。
*13 チョイス…銃は2種類 所持出来る。プレイヤーごとに得意な武器や、好みの武器がある。
*14 投げ物…手榴弾の類。
*15 射線を切る…建物などの遮蔽物を使い、銃弾の通る道筋を断つこと。これは本当に大切。
*16 ワンマガ…ワンマガジンの略。リロードを挟めば隙が出来るので、ワンマガで敵を倒し切るのが理想。