第50章 お慕い申し上げておりました
自分で言うだけあって、ナギの腕前は素晴らしかった。マップが頭に入っているのであろう。常に優位なポジションを陣取り、敵を返り討ちにした。
着実にダメージを重ねていく。
「今日もキルポ*7 が美味いです」
順調そうに見えたが、ここでトラブルが発生した。
味方が敵に倒されてしまったのだ。
このゲームでは、気絶した味方を治療し、起こす事が出来る。しかし、起こすのには当然リスクが付き纏う。
治療中は、10秒ほど無防備になってしまうのだ。その間に自分が倒されれば、味方も同時にゲームオーバーだ。
ナギほどの実力があれば、この先も1人で戦えるだろう。私は、ナギの選択を見守った。
「アナタは、ここまで共に戦った戦友。必ず助けます。
ワタシは、たとえゲームの中だったとしても、レディを見捨てたりはしません。絶対に…!!」
ナギの相方は、女性キャラだった。
『操作してるのは、おっさんかも知れませんよ』
「シャラップ!考えないようにしていることを、口にしないで下さい。気が散ります」
そして、ナギは宣言通りに味方を助け起こす。
その後2人は、順調に敵の数を減らしていった。ついには、あと残すチームは1つのみ。そのチームに勝てば、ナギは晴れてこの回のチャンピオンとなる。
しかし、相手チームは強かった。まずは腕の立つナギは後回しにし、相方から集中攻撃をしかける。そしてその後に、2人がかりでナギを仕留めてしまった。
「OH!!レディから狙うなど、なんと卑劣な奴らなのでしょう!」
『いや、そういうゲームです。これ』
リザルト画面で、総ダメージを確認する。数字は、2864。
このゲームでは、2000ダメージ叩き出せるようになった時点で、一人前と言われている。それを大きく上回ったナギの功績は、立派なものといえよう。
『六弥さん、お上手ですね。驚きました』
「ワタシのプレイを見ても臆さないとは。アナタのプレイが楽しみですよ」
そう言ってナギは、私の為に椅子を引く。どうも。と言ってから、席に着いた。
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*7 キルポ…キルポイントの略。次の地帯へ進む為に必要なポイント。敵をキルしたり、味方のアシストを行えば獲得出来る。