第50章 お慕い申し上げておりました
ナギのプレイが始まった。共に戦うチームメイトは、回復に特化したキャラクター。相方としては申し分ないだろう。
そして私は、ナギが扱うキャラクターに付いてあるバッチ*3 を見て言う。
『へぇ。ダイヤ帯*4 にいるんですか、六弥さん。かなりやり込んでますね』
「YES!ここまで登るのには、ワタシの血の滲むような努力が」
『始まりますよ』
「OH!いざ、尋常に勝負ですね!」
ナギは、飛行機から華麗にジャンプを決める。そして人気の高いポイントへと投下を始めた。
しかし運悪く、武器を手にする前に敵と相対してしまった。しかも、その敵は既に銃を手にしていた。
『これは、危険ですね。最悪、0ダメージで終わる可能性も』
「ノンノン。これくらいのピンチは、日常茶飯事です」
ナギは慌てる事なく、相手の後ろ側へ回り込む。そして、パンチに飛び蹴り。素手での攻撃を開始した。
圧倒的に有利なはずの敵は、常に背後に張り付くナギの動きに翻弄されている。
『見事なキャラコン*5 です!』
「THANKS!」
銃を持った相手を殴って倒したナギは、デスボ*6 を漁る。そして、所持品を奪うと移動を開始した。
当然、他の敵を倒す為である。ここは人が集まりやすい大きな街があるスポット。ターゲットの発見は、そう難しくないだろう。
走るナギの後ろを、相方もしっかり着いてくる。
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*3 バッチ…プレイヤーは、任意のバッチを付けられる。現在 滞在している地帯や、今までのプレイで獲得した称号。1プレイで与えた最大ダメージなどが一目で分かる。
*4 ダイヤ帯…やり込めばやり込むほど、上の地帯へと昇格していく。ダイヤ帯は、ブロンズ、ゴールド、プラチナ、のさらに上の地帯。Ipexのプレイ総人口の、5%にも満たないレベルの高い地帯。
*5 キャラコン…キャラクターコントロールの略。その名の通り、マウスを操り自キャラを操作する技術のこと。
*6 デスボ…デスボックスの略。このゲームでは、倒されたキャラクターは箱に変わる。その中には、そのプレイヤーが集めたアイテムが収納されている。