第50章 お慕い申し上げておりました
「んで?話ってのは?」
一応聞いてはみたが、おおよその検討は付いている。
「エリのこと」
ほら。やっぱりだ。
今日の2人を見て、ピンと来た。天が、エリの秘密を知ったのだろうと。
そして、この話を俺に振ってくるという事は…
こいつも、俺が彼女の秘密を知っている事実を認知しているのだ。
さて、どうしたものかと。酔いが冷めかけた頭で考える。
「直球だなぁ」
「長い前置きは嫌いだから」
どうやら、時間稼ぎさえさせてくれないらしい。天は、俺との距離を詰めながら言った。
「おーけー。お前さんが、あいつの話をしたいってのは分かった。
で?何が聞きたいわけ?」
「いい加減な気持ちなら、手を引いて」
「……なるほどなぁ。
ははっ。TRIGGERのセンター様ともあろう奴が、何を言い出すかと思えば。
“ ボクのプロデューサーにちょっかい出さないで〜 ” ってか?
それは随分と余裕のないことで」
余裕がないのは、俺の方だ。
天の真っ直ぐな宣戦布告に、これまた真っ向からぶつかって行くなんて。
いつもの俺らしく、のらりくらり躱せば良いものを。
“ エリの事なんて、べつに好きじゃねぇよ。お前の気のせいだろ? ” って。でたらめ並べて逃げればいいじゃないか。
でも…
「何とでも言えば?
それより答えは?キミは、やっぱりいい加減な気持ちでエリを追っかけてるだけなの?」
仕方ねぇだろ。
こんな俺にだって、逃げたくない時はある。
エリに関する話からは、たとえ相手が誰であろうと逃げたくないんだよ。
「いい加減な気持ちだったら…あんな面倒な女、好きになるかよ」