第50章 お慕い申し上げておりました
「秋の夜長に、お泊りパーティ。そう来ましたら、やる事は1つですね?」
ぬっと、どこからともなく現れたのはナギ。ぎょっとする俺達を置き去りにして、自信満々に言い放つ。
「魔法少女★まじかるえりりんのDVD鑑賞会を始めましょう!」
「「言うと思った…」」
俺と三月が俯いて言った瞬間、ナギはエリの腕をガっと掴んだ。
そして、そのままズルズルと引き摺っていく。
「春人氏!これは布教活動の一環。ワタシの幸せを、アナタにも分けて差し上げたいと思う慈悲なるココロです」
『うさんくさい宗教に勧誘してくる輩の常套句みたいになってますよ?』
「NO!ワタシのココロと言葉を信じるのです」
『ますます怪しいですって』
そうは言いつつも、エリはナギに付いて行った。なんだかんだクールになりきれない彼女らしい。
そんな背中に、天は告げる。
「プロデューサー」
『はい?』
「アニメ観るのはいいけど…。その…部屋の扉は、少し開けておくこと。いいね?」
お父さんか…!彼氏と密室の部屋にこもる娘を案ずるお父さんか!
ついつい内心で突っ込んでしまった。
まさかの誘拐に遭ってしまったエリ。俺も追いかけてナギの部屋へ行こうか。
アニメ鑑賞は御免被りたいが、彼女の隣ならば それも悪くない。
「じゃあ天にぃはオレの部屋に行こ?またお喋りの続きしようよ!」
「いいよ。でも、先に行ってて?ボクは後から行くから」
「え?なんで?」
「ボクは…彼に話があるから」
天は、たしかに俺を見てそう言った。どうやって自然にナギの部屋へ行こうか考えていた矢先だ。完全に油断していた。
「大和さんに話…?あっ!もしかして、IDOLiSH7とTRIGGERの大切な話!?」
「そうだよ。2グループの親睦を深める為の話」
「…これから、そんな平和な話しようって男の顔じゃねぇけどな」
明らかに殺気立った天を見て、三月は…
「あー…じゃ、じゃあオレは自分の部屋に戻ろっかなぁ…。明日の特番の台本、読まなきゃなんねぇし。じゃ!」
逃げた。