第50章 お慕い申し上げておりました
『一宿一飯の恩義は必ずお返し致しますので、どうか今晩は一泊させて頂けないでしょうか。あ!2人が無理ならば、どうかウチの子だけでもっ』
「お前さん、平気そうに見えて さては結構酔ってるだろ?」おもしろいぞ
天の後ろに立つエリ。彼の両肩に手を置いて、その身体を ずいっとこちらへ押しやった。
小さい声で、やめて。という天の顔は無表情だ。ウチの子扱いが気に入らなかったのだろうか。
「んな気ぃ使うなよ!部屋ならいっぱい余ってんだ!何泊でもしてけばいいじゃんか。な?」
『和泉さん…なんと優しいお言葉…』
「やったー!天にぃがお泊りだ!」
「こら陸。ハシャがないの。
帰れないんじゃ仕方ないから、一泊お世話になるよ。よろしく」
陸には優しい顔を向けていたというのに、こっちを振り返った表情は 無。これは自覚無しでやっているのだろうか。
「天にぃ!今日はオレの部屋で一緒に寝よう?」
「いいよ。陸と寝るのは久しぶりだね」
「じゃあプロデューサー様は、俺の部屋で寝るって事になるよなぁ」
『何故に』
「でもさすがにシングルベットに2人は狭」
「なぁ。オレがさっき、部屋ならいっぱい余ってるって言ったの聞いてたよな?てか、あんたなら知ってるよな」
「二階堂大和。それ以上くだらない冗談を続けるつもりなら……」
「え、っちょ!何!?こわっ!続けるつもりなら何だよ!せめて続きを言ってくれ!」
俺は、天による無言のプレッシャーに耐えられず、ついつい情け無い声を出してしまうのだった。