第50章 お慕い申し上げておりました
俺が天に、目で殺られそうになっている時。ポケットの中の携帯が震えた。長く続くバイブ。どうやら着信のようだ。
通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。席を外そうかとも思ったが、面倒だったのでソファに座ったまま話を始める。
「もしもし。はい……はい、こっちは特に問題ないっすよ。
……えー…マジですか。それって、マネージャーは知って…。
はい。分かりました。マネージャーには連絡してくれたんすね。じゃあ、他のメンバーには俺から伝えときます。
了解です。そっちも気を付けて。じゃ、お疲れ様でーす」
通話終了のボタンを押すと、画面はすぐに真っ暗になる。
俺が口を開くより先に、エリが問う。
『何かトラブルですか?』
「まぁな。いまの電話の相手、万…MEZZO"のマネージャーだったんだけど。
なんでも、この大雨のせいで 局の前の道路が冠水しちまったらしいんだわ」
「えぇ!?それじゃ、3人は帰って来れないってことかよ!」
「そういう事。いま局内にいる人間は、もれなく全員そのまま お泊まりだと」
俺が言うと、エリは弾かれたように玄関へ走った。俺達が止まる暇もなく、勢い良く扉は開かれる。
リビングにいた全員が驚いて、その後を追う。
エリは一歩外に出て、道路の様子を凝視していた。
目の前に引かれた大通りは、見事に池と化していたのだった。
『な…、なんてこった』
「ちょ!いいから早く戻れ!」
俺はエリの腕を掴んで、部屋へと引っ張り込んだ。