第50章 お慕い申し上げておりました
【side 二階堂大和】
それから1時間くらい経過しただろうか。心と身体がほどよく気持ち良くなって来た。
やはり、酒はいい。
何がいいって…
『……ん、何です?』
好きな子が可愛い…っ!!
「あ、いや。べつに、なんでも…ないです」
『??
変なの』
缶チューハイを持つ両手が可愛い。潤んだ瞳が可愛い。いつもより少し赤くなった頬が可愛い。いつもは鉄壁のガードが若干緩んでんのが可愛い!
隣に座るエリとの距離を、ついつい詰めてしまう自分。
いくら男の格好をしていようと。どれだけ仕事の腕が立とうと。俺の目には、ただの女にしか映らない。
いや、ただの女じゃないな。違う。ただの、じゃなくて、もっと特別な…唯一の人。
「…………」じーーーーー
あの、俺を監視する目さえなければ…
どさくさに紛れて肩とか抱いてみたり?物落とすふりして足に触ってみたり?色々と小細工は出来るというのに。
あの、九条天の厳しい監視の目さえ なければ。
「あっははは!大和さん!!春人のこと見過ぎ!!やらしー目で見てんじゃねーよ!おっさん!」
「ミツ、もう少し声のトーン抑えなさいよ。頼むから」
まじで頼む。じゃないと、九条天に俺が殺されてしまうかもしれないだろ?
『え。二階堂さんって、私の事そんな目で見てたんですか?』
「あんたも!頼むからちょっと黙ってて!」
天の 人を射殺せるような視線が、よりキツイものになったのは言うまでもない。