第50章 お慕い申し上げておりました
天と陸は、楽しそうにお喋りをしている。兄弟水入らずにしてあげようと、私と大和に三月は、静かに移動した。
移動と言っても、すぐ隣のソファ席。騒がしくすれば、すぐに声が届いてしまう距離だ。
それを気にしてか、大和は控えめな声で言う。
「そんじゃまぁ…そろそろ始めますか」
「賛成!オレ、なんかツマミ作ってくるわ!先始めてていいから」
『手伝いましょうか?』
「いいって。簡単なもんだから、すぐ出来るし。ちょっと待ってな」
三月は台所へ。大和は冷蔵庫へ向かった。私は1人、ソファにて待つ。
すると、大和だけがすぐに戻ってきた。その手には、数種類のアルコールが。
「どれにする?」
『では、ビールで』
差し出された缶ビールを受け取る。少し結露した缶は、よく冷えていた。
タブを引いて、軽くビールを持ち上げる。そして、小さめの声で言う。
『では、カンパ』
「久し振りの、あんたとの夜に。カンパイ」
大和の唇が、耳元に寄せられる。頬には髪が触れ、くすぐったくて急いで距離を取る。
驚く私を見て、大和は にっと笑った。
「なんて、な?」
『……心臓に悪いので、対面に座ってもらえます?』
「心臓に悪い?
へー。それって、ちょっとは俺を意識してくれてるって思っていいわけ?だったら嬉しいんだけど」
『ば、馬鹿なこと言って…!もう酔っ払ってるんですか』
「シラフだよ。って、言ったら どうすんの?」
どうする。と言われても、どうしたら良いのか分からない。考えあぐねていると、良いタイミングで三月が帰って来た。
「おまえら距離ちっけーよ!なんだ?内緒話か?オレにも聞かせろよー」
三月は手に持っていた料理を、テーブルに置いた。