第50章 お慕い申し上げておりました
雨が強く降って来た。
三月の洗った皿を受け取り、乾いたタオルで拭いていく。そんなエプロン姿の私に、大和が背後から言った。
「予報じゃ、ここまで強く降るって言ってなかったけどな」
『そうですね。車の運転にまで影響しそうな勢いです』
「あっ!じゃあ天にぃ達、もう少しいられる!?」
「いいよ。雨が弱まるまでね」
天は、お兄さんな顔で告げる。その言葉を受け、陸は素直に やったー!と万歳した。
「片付け手伝ってくれてサンキュ。もういいから、あんたも座ってろよ」
『そうですか?ではお言葉に甘えて』
私は、環の席に着いた。ちなみに、天が座るのは壮五の席。
しかし、私が座るのと同時に一織が立ち上がる。
「宿題がまだ終わっていないので、私はこれで失礼します」
宿題。というワードにトキめきを覚えた私。いつのまにか、歳を取ったのだなぁと感じる。
『何の宿題ですか?』
「数学ですけど…」
『…教えてあげましょうか?』
「…高次式の因数分解、あなたに解けるんですか?」
『ごめんなさい』
私が頭を下げると、一織は 柔らかい笑顔を見せた。
「ふふっ、おかしな人だな。
では、中崎さん。九条さん。ごゆっくり」
それだけ言うと、一織は自室へと消えて行くのだった。それを見送っていたナギが言った。
「ワタシは今から 魔法少女マジカル★えりりんのDVDを観て、今日出来たココロの傷を癒します。春人氏もご一緒にどうですか?」
『間に合ってます』
「OH…鉄壁のバリアです…」
仕方なく…という様子では、ナギもまた自室へと消えた。