第7章 どうやって僕達を、楽しませてくれるのかな?
中盤。
なんと私はリードを奪っていた。
しかし。ほんの少しの気の緩みが、失態を招いてしまう。
「よっし!よし!取り返したぞぅ!」
『〜〜〜っく、』
「ねぇ、今はどっちが勝ってるんだ?……ねぇって。お願い、無視しないで答えてよ」
同じ数字が並んでいるのだ!何故 千は今が同点だと気付けない!?
私と百は、プレイに集中するあまり 彼に答えてやれる余裕はない。
そしてついに後半へとゲームは移行する。
「…ロスタイム突入。いやー良い試合だね!」
こっちには口を開く余裕もない。
百の言葉に気を取られ、ついジョイスティックに当てていた指が滑る。
『っ、!』
「その隙、モモちゃんは見逃さない!いっけぇー!スーパーウルトラモーニングシュート!」
っな、なぜ朝!?
いや、突っ込みの台詞を考えている場合ではない!いま点を取られたら確実に負ける!
何か…っ、この状況を打破する決定的な…策は無いか!?
もうこの際、反則技でも良い。百の気を逸らし、大きく隙を作る打開策は…!
必死に働かせる頭。そんな私の頭に、1つの妙案が浮かんだ。
『…モ、モモちゃん愛してる!♡』
「えぇ!?」
「…っぷ、…くくっ、」
私の意味不明な突然の告白に動揺した百は、せっかくのチャンスに ボールをこぼしてしまう。
私はそれを奪い取り、相手ゴールへと一直線。
「ヤ、ヤバイヤバイっ!」
『っいける!』
初めて百の顔に焦りの色が浮かぶ。
ガラ空きになったゴールへとシュートを放る。ボールは勢い良く、キーパーの隣を振り抜けて 見事に1点を追加。
そこで、タイミング良く試合終了のホイッスルが鳴り響く。
「…あーぁー。してやられたなぁ…がっくし」
「あぁ、モモが負けちゃっ」
『ヤ……ヤッッタア!!見たっ!?見ました!?今の華麗なゴール!ほらスロー再生やってますよ!
やっと勝てたー!めちゃ嬉しい!もうさいこ…」
「…………」
「…………」
いま気が付いても、後の祭りだが…。
私は、2人の前で滅茶苦茶に取り乱していた。