第49章 天にぃとラブラブだぁ
いよいよ、満を持しての出番である。天はカメラの前へ向かう。困ったように、はにかみながら。あざとい笑顔である。
「ふふ。なんだか、だんだん緊張して来ました」
「いやいや〜!こんなんもう茶番みたいなもんなんで、サラ〜っと決めちゃって下さいよ!」
「OH…ミツキ…アナタはマイフレンド。信じていましたのに…」
そんな、ナギの悲痛な声の しばらく後。
天は、美しい笑顔を湛え 涼しげな声を鳴らす。カメラの前にいる、全てのお姫様の為に。
「キミの隣は、唯一の安らぎ。キミの隣でだけ、本当のボクでいられる。
会いたいよ。いつだっていい。場所だってどこでもいいから。ただ、一緒にいさせてくれない?」
台詞の途中から、甘い笑顔は消えていた。代わりに、今の表情からは哀愁漂っている。
見ているこちらまで、胸がいっぱいになって切なさが突き上げてくるほどに。
「天にぃ…カッコいい…」うっとり
マイクでは拾えないくらいの、ごくごく小さな声で陸が呟いた。
すかさず三月がまとめに入る。
「いやーもう、さすがとしか言いようがないですね!うんうん。
あ、そろそろ配信時間が終わっちゃいそうです!」
「NOーーー!中途半端 良くないです!ワタシはまだ負けていません!」
「六弥さん。あなた、ご自分で “ まだ ” って言ってるの気付いてますか?」
三月は、チラリとこちらを見る。いや、私を見たのではない。私と紡の間にある、時計を見たのだ。
あと1分だ。あと1分で、配信枠の終了時間となる。
「ミツキ!なんとかして下さい!」
「ばっ、なんとかって!無茶言うな!ほら、もう諦めて視聴者の皆さんに手ぇ振って!言え ほら!はーい 笑顔でグッバーイ!!」
「NO!こうなったら九条氏!カメラが止まったあと、プライベートで延長戦を」
「え?やだ」なんで?
「ジーザス!!」