第49章 天にぃとラブラブだぁ
ナギが、カメラの前に進み出る。その優雅たる所作は、まるで本物の王子様のようだ。
伏せられた瞳は憂いを帯び。差し出された手は、指先までが美しい。
つい うっとりと見つめてしまい、心を持っていかれそうになる。
「アナタを想うとワタシの胸は、恋という名の荊で締め付けられます。この苦しみからワタシを解き放てるのはアナタだけ…。アナタからの愛だけなのです。
ですからどうか、本日一日 アナタと共に過ごすことの出来る権利を、ワタシだけに下さい。必ず、世界で一番 ハッピーになれますよ?ワタシも。そして、アナタもです。マイ プリンセス」
シーーンと、場が静まり返った。
まず、三月が首を捻って言う。
「ポエム?」
次に、大和が頷いて言う。
「ポエムだな」
続いて陸も言う。
「素敵なポエムだね!」
一織が、ポ と口を開いた瞬間、ナギがカメラに背中を向けて叫ぶ。
「レディへの愛を伝える為にワタシの口から出る言葉は全てポエムとなるのです!!何か問題ありますか!?」
「問題ないと思ってんならキレるなよ!!」
三月が怒り笑いしている。彼らがわちゃわちゃと楽しいトークをしている間に、コメントを確認する。
“ ポエム! ” “ ポエムww ” “ ポエムでも素敵 ”
ポエムというワードが交錯していたが、悪い感触ではない。実際、あのように熱く愛を囁かれたい乙女達は沢山いるのだろう。
そもそも、この配信の多くの視聴者は IDOLiSH7ファンである。
ナギvs天の対決は、やはりこちらの部が悪い。
このアドバンテージをひっくり返せるかどうかは、全て天王子様にかかっている。