第49章 天にぃとラブラブだぁ
「っつーことで、カメラに向かって一織!どうぞ!」
「っく、…こういう時、必ず私がトップバッターなんですよね…。はぁ」
「一織!頑張れー!」
懸命に甘い台詞を絞り出そうとしている一織。隣の陸は声援を送った。
「…ぐ、偶然にも、ここに映画のチケットが2枚あるのですが…良かったら、私と一緒に行ってくれませんか?
…とか」
「とか!じゃねぇよ!王子様どこ行った!」
顔を赤く染める一織。声を張り上げる三月。しかし、コメントを見る限り好評ではある。
「えーと、なになに?
“ 一生懸命なところが可愛い ” “ ツンデレっぽくて好き ”
へぇ。王子様要素なくても叩かれないのか。ちょっと ほっとしたわ」
「兄ちゃんは心配だよ。チケットが偶然って…!
まぁいいか。次に行ってみましょう!やっぱ順番的に大和さんな!」
「…本当にやらなきゃ駄目?」
「ヤマト。ワタシの前座として、美しく散って下さい」
「あぁー散りたくねぇ…」
「何も、難しく考える必要などありません。ただ頭の中に愛しい あの人を思い浮かべて、込められるだけのラブを込めて、言葉を紡ぐのです」
「だから、それがすっげぇハードル高いんだっつの!王子とかほんとキャラじゃないのに…!」
くそっ…と、大和は悪態をついてから 諦めたようにカメラの前に歩み出る。
そして、チラリとこちらを垣間見てから 口を開いた。
「…あのさ、本気でそろそろ2人で会いたいんだけど。あんたの体、マジでいつ空いてるわけ?」
「WONDERFUL!ヤマト、アナタらしい告白ですね!」
「告白じゃ、ねぇよ…」
よほど恥ずかしかったのか、大和は早々に席へと帰る。そして両手で顔を覆って俯いてしまった。
「オレも良かったと思うぜ!ここは、実際にプリンス賞を獲った先生に感想を聞いてみましょう!
今のは、ズバリどうだったでしょうか?」
「……良かったんじゃない?
ただ…ちょっと、馴れ馴れしいのが不愉快でした」
「え…なに。もしかして俺、今から本物の王子様に首はねられんの?」
天が纏った黒いオーラに、本気で怯える大和だった。