第49章 天にぃとラブラブだぁ
その後、天の為に用意してくれたという控え室にて着替えをする。
今日は、スタイリストもヘアメイクアーティストも同行していない。プロには全く及ばないが、僭越ながら私が手を施していく。
「なんか新鮮」
『私が髪をセットするのが、ですか?』
「うん。本当は自分で出来るけどね。キミに触って貰えるから黙っておく」
『全く黙ってないじゃないですか』
どことなく天の機嫌が良いような気がする。やはり弟と仕事が出来るからだろうか?
しかし 私がそう問い掛けたところで、天から正直な答えが返ってくるとは思えない。だから、わざわざ聞くことはしなかった。
髪のセットが終わると、次は着替えだ。しかし、衣装というほど大したものではない。
王子様を意識した、胸元にフリルがあしらわれた真っ白なシャツ。加えて、グレーのジャケットとパンツというシンプルなものだ。ジャケットのカラーの縁と パンツのポケットの一部には、ピンクが差し色で入っている。カチっと見えて、遊び心のある服装だと思う。
パーテーションの向こう側にいた天が、それに身を包んで姿を現す。
『似合っていますね!』
「そう?スーツに近いから、着慣れないけど」
私は天の向かい立ち、胸のフリルを整える。
『本当に似合ってますよ。まるで、本物の王子様のようです』
「……ふぅん」
意味ありげに鼻を鳴らしたかと思うと、天は私の手を取った。そして、甲に軽く唇を落とす。
「ボクを、キミだけの王子にしてくれる?」
『……は、…はなれて』
せっかくの下ろし立ての衣装を、私の鼻血で汚してしまう前に。