第49章 天にぃとラブラブだぁ
『じゃあ そろそろ行きましょうか、天。台本は読んでありますよね』
「一応ね。でも、ほとんど台本通りには進行しないらしいけど」
私は鞄を持って、天を扉へと促した。それと同時に、楽と龍之介も立ち上がる。
『では、行ってきます。楽と龍は、今日は姉鷺さんに送ってもらって下さいね。話は通してありますので』
「おう」
「行ってらっしゃい!」
2人と廊下で別れた私達は、その足で駐車場へと向かう。もうすっかり日も沈んだ頃合いではあるが、天はまだ帰れない。
ある番組に、ゲスト出演する為だ。番組と言っても、テレビやラジオではない。私も大好きな、ネットで配信されているものだ。
『こんばんは。どうもご無沙汰しております。
小鳥遊社長』
「やぁ、よく来たね。今日はどうぞよろしく」
「こちらこそ、番組に呼んで頂いてありがとうございます。精一杯やらせてもらいますので、よろしくお願いします」
「ははは。相変わらず君は真面目でいいね。でも、緩〜い雰囲気も この番組の魅力だから。肩の力を抜いて、楽しんでね」
そう。今日、天が出演するのは “ キミと愛なNight! ” である。
社長に挨拶していると、事務所に紡もやって来る。
天と社長が話をしている間に、私は彼女にも声を掛ける。
『久々ですね、紡。今日はよろしくお願いします』
「お久しぶりです!私も、またお会い出来て嬉し」
彼女がまだ話し終わっていないというのに。私と紡の肩には、ガッシリと社長の手がのしかかった。
さっきまで天と話していたのに、いつの間に傍まで移動したのだろうか。
「春人くん…?おかしいなぁ。今のは、僕の聞き間違いだろうか。いま、君の口から “ 紡 ” って言葉が聞こえたような気がしたんだけど。あはは!まさか、あり得ないよねぇ?だって、ただの同業者という関係でしかありえない君が、娘の事を名前で!しかも呼び捨てで」
かなりの剣幕で圧を掛けられたが、このくだりは長くなりそうなので割愛する。