第49章 天にぃとラブラブだぁ
プリンス賞。
それは その名の通り、王子様のようなキラッキラの男性に贈られる賞である。
アイドルという枠に留まらず、有名な俳優や、眉目秀麗なモデル達も数多くノミネートされる。
そして。そんな数多くの好敵手を破り、名誉あるプリンス賞を獲ったのが…
何を隠そう、九条天である。うちの、九条天である!
「ご機嫌だね。プロデューサー」
『それはもう。ルンルンです』
「良かった。頑張った甲斐があったよ」
真顔でルンルンだと告げた私を “ どこがだよ ” という視線で見下ろす楽。
そんな彼を無視して、私はクリスタルで作られているかのようなトロフィーを磨く。
「ファンの子達から見たら、やっぱり天は素敵な王子様なんだね。
…俺達には、王子様キャラとは少し違って見えるけど」
「当たり前。どうして仕事仲間の前でキラキラしてなきゃいけないの」
「は。何が王子様キャラだ。この似非王子が」
「ボクはプロとして、ファンが望む姿でカメラの前に立ってるだけ。いちいち突っかかって来ないでよ。煩わしいから」
「わずっ…!」
たしかに、こうして楽と小競り合いをする天の姿は、王子様とは程遠い。
『ちなみに、楽は二次選考にすら上がれませんでした』
「聞いてもねぇ情報で俺をむやみに傷付けるんじゃねぇよ!」
「ぷ。ダサ」
「久々に聞いたけど、やっぱ腹立つな!お前のそれ!」
「ま、まぁまぁ!楽はほら、王子様って感じじゃないから…!
えっと、楽は…そうだなぁ」
「柄の悪いチンピラ?」
「安心しろ天。顔は殴らないでやるよ」
ちなみに、龍之介は最終選考の一歩手前まで残った。沖縄のホテル王の息子という事務所のイメージ戦略が功を奏したのだと思われる。
しかし。天が決勝へと進む事は、かなり早い段階で決まっていた。プリンス賞の決勝枠は5つ。その内の2つがTRIGGERで埋まるのを、運営側が意図的に避けたのだろう。実に惜しい。