第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
砂浜の上に、髪を広げて 俺を見上げる春人。
その瞳は一切 驚きの色を見せないで、ただ真っ直ぐに俺だけを見ていた。
瞳の中に映っているのは、俺と、夜空に浮かんだ星。
多分、俺の瞳には君しか映っていないのだろう。
月明かりに照らされた君の肌は、とても綺麗で。まるで陶器を思わせた。どうしても触ってみたくて、手を伸ばす。頬に指を滑らせると、さらさらとやっぱり心地が良かった。
そのまま指を顎の方に移動させて、ほんの少しだけ持ち上げる。
さきほどの宣言通り、春人は何の抵抗も見せなかった。
これから何をされるのか、分からないでもないだろうに。
以前は、もっと凄いことを2人でしたというのに。何故か、その時よりも今の方がもっとずっとドキドキしてる。
それは多分、前よりももっと、俺の中での春人が 大切になったからだろう。
どう言い表したものか難しいが…とにかく、君は特別な存在として、たしかに俺の中に住んでいる。
それにしても、不思議な感覚だ。
こうして君を組み敷いて、その顔を見下ろしていると…自分でも知らない俺が顔を出す。
そんな俺が、言うのだ。
君を今すぐに、滅茶苦茶にしてしまいたい。と。
今度は、よく見知った俺が言う。
こんなのは駄目だ。彼の嫌がる事をしてはいけない。と。
だが そんな忠告なんて、そいつは聞きやしない。
こんな自分を、俺は知らない。理性も、自制も、感じられない そいつは…まるで獣じゃないか。
こんな獣に身を委ねて、いい訳がない。取り返しのつかない事になるのは、目に見えてる。もしかすると、大好きな仕事にも集中出来なくなるかもしれない。
それになにより…今、本能のままに口付ければ
もう後には引けないだろう。