第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
「わざわざブロマイド5枚の為に、沖縄での撮影スケジュール組んじゃうなんて。いつもなら、合成で済ませてるだろ?それに、不自然に空いた時間も…。
全部、俺に故郷での時間を与える為だったんじゃないかって」
『わ、分かりましたから。皆まで言うのやめてもらえます?』
「あはは。やった!春人くんのその感じ、俺の正解だ」
春人は、諦めたように話し始める。
『概ねは、龍の言った通りですが…。本当は、こう伝えるはずだったんです。
“ いつも忙しい貴方だから、今日くらいは ゆっくり家族と楽しい時間を過ごして下さい ”
でも結局、私はそう言えなかった』
「…それは、どうして?」
胸の中が、多幸感で満ちていくのを感じるながら。俺は問い掛ける。
すると春人は、また膝を抱えた。身を小さくして答えをくれる。
『私が…龍の故郷である沖縄で、一緒に過ごしたいと思ってしまったから。
すみません。こんな、ワガママを。これでは、一体どっちの誕生日だか分からな』
言葉の終わりを聞くより先に、体が動いてしまった。だって、どうしようもなく嬉しかったから。
春人を自分の腕の中に閉じ込めて、胸に額を押し付けた。こうしているともしかしたら、俺の胸から溢れた幸せが 相手にも伝わってしまうかも。
そんなふうに思いながら、俺は瞳を閉じた。