第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
『でも実際、私には いつどうやって貴方を甘やかしたら良いのか分からないので、必要な時は教えて下さいね』
「まさかの申告制なのか!」
『好きな時に、どうして欲しいのか伝えて下さい』
「う、うーん、分かった!じゃあ、甘やかして欲しい時は “ 頭なでなでして ” って言うよ!」
『ぜひ2人の時に』キャラ崩壊が過ぎる
ふわっと訪れる、沈黙の時間。こんな静かな空間でさえ、隣にいるのが春人ならば苦ではない。
そういえば…、俺はまだ 伝えたい事があったのだ。
「『あの』」
声を発したタイミングが、バチリと重なってしまった。驚いて顔を横に向けると、視線がかち合った。
そして、春人が先に口を開く。
『龍から、どうぞ』
「あ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて俺から!
御礼が言いたいって、ずっと思ってたんだ。今日のこと」
『御礼?』
「うん。今日は、ありがとう。たくさん甘やかしてくれて」
『…さぁ。私には、何の事だか』
彼はシラを切ったが、本当は全部分かっているはずだ。俺が言ってる言葉の意味を。
「はは。春人くん、俺が気付いてないと思ってる?さすがの鈍い俺でも、分かってるからな!
今回の沖縄滞在が、俺への誕生日プレゼントなんだって」
笑って伝えると、春人は少しだけ気まずそうに海を見た。