第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
そんな彼が、あまりにも可愛くて。思わず言葉を口にするのも忘れてしまう。
『はぁ。私も、龍みたいに 格好良くなりたい。強くなりたい。心広くなりたい。海みたいに大きい人間になりたい』
「……え、いや…。えっと、春人くんは、今のままでも十分…か、」
『え?格好良いです?』
「か…、可愛い」
今の春人を見ていると、つい本音が口を突いて出た。褒め言葉のつもりではあるが。このタイミングでの発言は、あまりよろしくないだろう。
『……はぁ。もっと、男らしくなりたい。仕事も、もっと出来るようになりたい』
「え?いま以上に?」
『勿論です。まだまだ足りない。TRIGGERの隣に立つには、足りてない』
「君は本当に…好きだよね。TRIGGERが」
『当然でしょう。私は、TRIGGERに恋をしているんですよ。今までも、これからも、いつまでも』
嬉しい。
はずなのに。少しだけ胸の奥が痛んだのはどうしてだ。
『だから、私ももっと上へ行かなくてはなりません。とりあえず、この狭いキャパを何とかしないと。いつかボロが出ると思うんですよね。以前、曲が作れなくなってしまったときのように』
「春人くんのキャパが狭いって?いや、全くそんなふうに見えないけどな」
『そう見せてるだけですよ。こんなのは演技です。実際は、些細なことでイライラするし、仕事舐めてる人見たら殴りたくなるし。
本来の私なんて、所詮こんなものですよ』
「そういえば、前に ミントタブレット依存症になってた事があったな!あはは、あの時の春人くんは少し怖かったかも」
『ありましたねぇ。そんな事も』
春人は後ろに両腕を伸ばして、体重をかけた。そして顔を上向けて溜息をついた。