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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日




「でもね、心配しなくても大丈夫。無理してるつもりはないから。
多分、俺は存外このポジションが性に合ってるんだよ。
家族を守るのも、天と楽の衝突をなだめるのも。嫌って思った事ないんだ。
誰かをほんの少し助けた時、きっと 同時に俺も救われてるんだと思う。
皆んなの笑顔とか、ありがとうって言葉とか、そういうものが 今の俺を作ってくれたんだ。俺は、そんな今の俺を 誇りに思ってるよ」


足を止めて、砂浜の上 向き合う2人。

上手く伝えられただろうか。俺の根底にある気持ちと、大切にして来たもの。
誰かに理解して欲しいと思ったことはないし、聞いて欲しいと思ったこともない。

でも、君には 見せても良いと思ったんだ。俺の中の1番奥にある、心。


『…海』

「え?」

『深い。広い。そして綺麗だ。
貴方はまるで、この沖縄の海みたいですね』

「ちょ、いやいや褒め過ぎだから!」


春人は、ストンと砂浜の上に腰を下ろした。そして、自らの膝を抱える。
突然座り込んだ姿に、ちょっとだけ驚いたが 俺も隣に座った。

彼の表情を伺おうと、顔を覗き込んだ。しかし、そんな視線から逃れるように そっぽを向いてしまう。


「春人くん?」

『私…もしかすると、龍は 私と似たところがあるのかも。なんて思っていました。
他人に甘えるのが苦手で、寄り掛かりたくても どのくらい体重を預ければいいのか分からない。そんなところが、貴方にもあるのだと。

でも、それは違った。龍は、私とは全然違う。
キャパシティが、違い過ぎる。私とは比べられないくらい、貴方は心が広くて、器の大きい人。
そんな事に、今更ながら気付いてしまった…』

「いや、俺はそんな」

『見せかけじゃない。龍は、優しくて、綺麗で。そんなのって…めちゃくちゃ 格好いい…!』


手の甲を、顔の中心に持って来た春人。しかしそのくらいでは、全然隠し切れてない。

この暗がりでもハッキリ分かってしまうくらいの、真っ赤な顔は。

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