第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
『……っぷ!』
上半身を起こした俺を見て、春人は吹き出した。俺は、首を傾げて問いかける。
「え…な、何?」
『いや、あはは、その…、髪の毛が、寝癖が物凄くて!すみません、少し ツボってしま…っふふ』
あぁ…と言って、俺は自分の髪に右手をやった。
「これくらいなら、まだマシな方だよ。俺、起きるといつも髪がぐちゃぐちゃで大変なんだ」
『はは…、実験に失敗した 博士みたいっ』
「ちょっと!笑い過ぎだよ春人くん、さすがに恥ずかしい」
『す、すみません…。しかしこれは、明日の朝に特大の楽しみが出来てしまいましたね』
瞳を涙で潤ませる姿を見て、俺は誓った。
明日は、絶対に春人より早起きをして、寝癖をしっかりと直しておこうと。
「俺、どれくらい寝たんだろう。今は何時?」
『22時を少し回ったところでしょうか』
そうか。俺は4時間近くも寝てしまったのだ。彼にはバレないように、小さな溜息をつく。本当に、勿体無い事をしてしまった。
春人は、閉じていたカーテンを開いた。
『龍。ほら、見て下さい。綺麗ですよ』
すっかりと沈んでしまったサンセット。美しい太陽は姿を消していた。しかしその代わりに、真ん丸な月と 夜空いっぱいに散りばめられた星々があった。
『明るい部屋から見てこれほど綺麗なら、暗い場所からなら もっと美しいんでしょうね』
「!!
そうだ… 見にいこうよ!これから、外に」
きっと今の俺は、子供みたいに顔を輝かせているのだろう。そんな表情を向けられた春人は、困ったように笑った。
『…その、頭で?』
「急いで寝癖 直すよ!!」
俺はベットから跳ね起きて、洗面台へと走った。