第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
ベットの中でもぞもぞと身を動かし、こちらを見下ろす春人を見た。
そして、ある事を思い出していた。ある事とは、今みたいに優しく頭を撫でてもらった過去。
「覚えてる?俺、前にもこうやって春人くんに撫でてもらった事があるんだよ」
俺が言うと、彼は微笑んだ。しかし、覚えていないと答える。表情とは裏腹な答えだったけれど、俺には分かった。
多分、春人はその時の事を覚えている。
「まだ君は、俺達のことを苗字で呼んでたね」
『そうでした?』
「そうだよ。でも、嬉しかったな。
君は、ボロボロになった俺の名前を呼んで、こう言ったんだ。
“ 大丈夫。守ってあげる ” って」
【10章 173ページ】
『!!
貴方、あの時 起きてっ』
「あはは、ほら。やっぱり春人くん覚えてた」
そう言うと、彼は しまった。とばかりに俺から目を逸らした。こんなドジを踏むなんて春人らしくない。
俺と2人きりの空間で、多少は気が緩んでいるのだろうか?だとすれば、嬉しいけれど。
「とにかく、本当に嬉しかったんだ。あんなふうに 誰かに甘やかしてもらうのって、あまり経験なかったから」
そういえば…。と、思い至る。
俺は、あの時から 春人を意識するようになった気がする。
強いのに、弱い。
厳しいのに、優しい。
近いのに…遠い。
そんな彼の事がもっと知りたくて、近付きたくて。
本当に…好きで。
天は、俺に言った。
“ 人として、好きなのだろう ”
本当に、そうなのか?
この胸に溢れ、君を想う愛おしい気持ちは そんな言葉で片付けてもいいものなのだろうか。
「〜〜〜っ!」
恥ずかしさから ガバっと体を起こす。
“ 恋 ”
なんて単語が、俺の頭に浮かんできたから。