第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
『まぁ。いくら世間が求めているからと言って、龍が本当に嫌だと思うなら…無理する必要はないですけどね』
「いや…そこまで無理はしてない。と思う。
やっぱり、常に葛藤はあるけどね」
ファンが望んでいる俺を見せてあげたい。
でも、本来の俺はエロくもセクシーでもない。
それは、ファンを騙しているのでは?
本当の俺では、愛してもらえないのだろうか。
挙げればキリが無い、俺の気持ち。
どうしても時折、事務所の決めた売り出し方に抗いたくなる。でも…
「そんな、いくつもの気持ちに折り合いをつけながら 毎日TRIGGERをやってる。
でもね、本当に嫌じゃないよ。そうやって 自分のキャラについて悩むのも、ある種の戦いだって 最近気付いたんだ」
『戦い…ですか』
「天は、徹底したプロ意識で 完璧を追う。楽は、歌やダンスだけじゃなくて演技やバラエティでもファンを楽しませる。春人くんは、曲作りや コネクションの獲得、プロモーションと…
もう挙げたらキリがないね!
とにかく、皆んな そうやって戦ってるんだ。それは全て、TRIGGERの為。TRIGGERが好きだから、望んで戦ってる。だから、俺だって 出来る事は全部やりたいじゃないか。俺だって、チームの為に 全力で戦っていたいよ」
『……龍』
俺の全ての気持ちを受け取った春人は、目を見開いた。少しは、今の想いが伝わっただろうか。
『大丈夫。貴方は素質がある』
「素質?」
春人の視線が、俺の頭の先から爪先までを 何度も何度も往復する。なんだかその視線はねちっこくて、いやらしく感じてしまう。
『TRIGGERの為に…本物のエロエロビーストになりましょうね』
「お、俺の戦いって…」