第48章 《閑話》とあるアイドルの誕生日
無言のエレベーター内。乗っているのは、俺達だけだった。
『それにしても、さっきの応対は満点でしたよ。彼女、最後は笑っていましたから』
「うーん…。あんなので、良かったのかな?誘いを断ったことで、傷付いてないといいけど」
『……もしかして、私 いらないことをしましたか?』
「え?」
春人の声が、冷えた気がした。
『本当は、誘いに乗りたかったのかと』
「えぇ!?」
『自分で口が堅いなんて言う人間は信用出来ませんが。しかし彼女、こうも言っていましたね。
貴方になら、何をされても構わないと。彼女に付いて行けば、めくるめく夢のような夜が過ごせたかも…』
「な、何言ってるんだ!俺って世間では夜は獣になるとか言われてるけど…む、無理無理!無理だから!
そんなの、春人くんもよく知ってるだろ!?」
『一応は知ってますけど。それでも、十龍之介という人間の全てを知り尽くした訳ではありませんので』
「……春人くん?」
なんだか、本当に様子がおかしい。言葉の端々に、棘のようなものを感じる。
これって…もしかして。もしかするとだけれど…
「ヤ、ヤキモチ とか?」
『………』
「あっはは!ごめんごめん。そんなわけないよな!」
『そうですよ!そうですよ。何言ってるんですか!何言ってるんですか。馬鹿じゃないんですか!馬鹿じゃないんですか』
「え…っと、春人くん?全部、2回、言っちゃってるんだけど」
これは、まさか 動揺しているのか?
まさか…そんなわけ…
『…ふぅ。
ありえません。貴方がああいったエロい誘いを受けるということは、貴方のエロが世間に浸透しているということ。それは、TRIGGERにとってプラス。だから、私にとって 龍がエロい目で見られるのは喜ばしいこと…なんですから』
「エロ担当って大変だよ…」
やっぱり、そんなわけ なかった。