第47章 《閑話》とあるアイドルの休日
『せっかくですから、天と龍にも声を掛けましょうか』
「そうだな。天は置いといて、龍は即戦力だ」
再び自宅へと帰って来て早々、春人はそう言った。俺は頭の中で、龍之介に料理を手伝わせる算段を踏む。
そういう訳で 提案に乗ると、春人はすぐに携帯電話を耳に当てた。さすがというか何というか、やる事が早い。
しかし、天か龍之介。今どちらに電話をかけているのだろう。
どうせなら、俺達がそれぞれ違う方にかけたら、効率が良い。そう考えた俺は、春人に問う。
「おい、あんた今どっちにかけてんだ」
『天です』
《え?なに?天はボクだけど。これ、悪戯電話?》
『あ、違います。今のはこちらの話です』
どうやら、俺へ返した “ 天です ” という答えが、電話に出た天に伝わったらしい。
そんな小さな行き違いが可笑しくて 笑いを殺し、俺は龍之介に電話をかける。
《休みの日に聞くキミの声も悪くないね》
『いつもと同じでしょう?ところで、いま何かしています?』
《家で本を読んでた》
『お腹は空いてますか』
《ほどほど。なに?もしかして食事の誘いだったりする?》
『さすが天。冴えてますね。来てくれます?』
《もちろん》
『じゃあ今すぐ貴方も、楽の家に集合で』
《は?ちょっと待って。なんでキミ、いま楽の家にい》
電話口からは、まだ天の声が聞こえていた気がしたが。春人は通話を終えた。
俺の方も、もう龍之介との通話は終えていた。その結果を報告する。
「龍、すぐ来れるってさ。料理しようっつったら、あいつすげぇ喜んでた。
天の方はどうだった?」
『天も喜んでいましたよ』
「…へぇ。それはちょっと、意外かもな」
天の事だから “ どうして休みの日にまでキミ達の顔を見ないといけないの?料理なら勝手に作ってればいい ” とか言いそうなものなのに。
「可愛いじゃねぇか」
『ふふ。可愛いですね』