第47章 《閑話》とあるアイドルの休日
もぐもぐと咀嚼をする春人の口元ばかりに、目がいってしまうのを自覚していた。
「……」
(な、なんか エロくないか。こいつ)
どうして自分が、こんな馬鹿なことを考えているのか。理由は嫌ってほど分かっている。
全ては、昨夜見た夢のせいだ。なんだって俺は、エリでもLioでもない 春人とまでキスをしたのだろう。
たとえ夢の中の出来事だったとしても、腑に落ちない。
「……ん?」
じっと春人を見ていたせいか、俺はある事に気が付いた。
尋常ではなく、食べるのが遅いのだ。俺の皿はとっくに空だというのに、春人はまだ半分ほどチャーハンを残している。
「お前、そんなに食べるの遅かったか?」
『………』
俺がそう言うと、春人は悲しげに目を伏せた。そして、カチャリとスプーンを置いた。
『…さっき、楽は二日酔いどころではない大事件に見舞われたと、言っていましたよね』
「そうだけど あんまり掘り返すな。その話題は。思い出したくもねぇんだよ」
『貴方のその気持ち、私には 痛いほどよく分かります。何を隠そう、今日、私にも大事件が起きたのですから』
「な…っ!!」
俺と同じ?と、言うことは春人の奴も今朝、パンツを手洗いしたのか!?
と、思った俺だったが、すぐに考え直した。
おそらく、こいつが言う大事件は、俺の大事件とはまた別のものだろう。
「何があったんだ?話してみろよ」
『実は、今日ここへ来た理由の半分は、その大事件に関係しています。
ひいては、楽。貴方がもし私に協力してくだされば、その大事件は解決に向かうかもしれません。
少し今から、付き合ってもらえませんか?』