第47章 《閑話》とあるアイドルの休日
【side 八乙女楽】
俺は、こんなにも幸せでいいのだろうか。もしかすると、人生に散りばめられた幸福を、この瞬間に使い果たしてしまったのかもしれない。
でも、べつにそれでも良いと思った。
だって。ずっと会いたくて、欲しくて欲しくて堪らなかった愛しい女が…
俺の腕の中に今、いてくれるのだから。
ずっと夢見ていたLioとの口付け。夢中にならないはずがない。
二度と離すものかと、この腕で強く抱き締めて。必死に唇を重ねた。
「Lio…!は…っ、Lio、ずっと、会いたかった」
『ぁ…っ、楽、嬉 しい!でも…私は、Lioじゃないよ』
「!!
お前… エリ…!」
『愛してる、楽…。愛してるよ』
「っ、…あぁ、俺も、愛してる」
俺はそう答えて、エリにキスをした。
どうしてだろう。俺は、ずっとLioが好きだったはずなのに。いや、その気持ちは今も変わっていないはずなのに。
エリに愛してると告げられて、こうも胸が高まるのは 何故だ。
違う。もうしらばっくれるのは、やめよう。
俺の心の中には今、2人の女がいるという事実を 認めなくてはならない。
俺はエリの唇を散々 貪る中、ゆっくりと瞼を持ち上げる。自分の舌の動きに翻弄され、小さく震える彼女を どうしても見つめたくて。
「は、…はぁっ、エリ…」
『…ん、ぁ…っ。が、楽 』
「!!
なっ…おま」
なんと、そこにいたのはLioでもなく、エリでもない。
春人だった。
その顔を、はっきりと俺は見たはずなのに。どうしてだか、止められなかった。
甘い口付けを、やめられなかった。
それどころか、もっと。もっと欲しいと、俺は夢中で舌を絡め続けた。
「…っ、」
(なんで、俺は…こいつとキスしてるんだ?あぁ、駄目だ。頭がぼーっとして、何も考えられない。
とにかく、信じられねぇくらい気持ち良くて。こんなのは…もう、キスだけで イってしまいそう…)