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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第47章 《閑話》とあるアイドルの休日


*

あっという間の出来事で。いま私は、楽の腕の中だった。彼の鎖骨の目の前で、大きく瞬きを数回。ようやく、遅れて声が出せる。


『ちょっ、貴方!寝ぼけ』

「うるさい」

『え』


顔を上げた瞬間、楽の熱っぽい唇に 声が吸い込まれる。


『っん!?』


がっちりと抱き込まれ、身動きの取れない私。唇を、何度も何度も貪られる。楽の熱い舌は、強引に私の口中を犯す。
舌同士が絡まる度、ぴちゃ と生々しい水音が耳に入ってきた。


『ん、…ふ、や…待っ て!が、く』

「は……」


約1年ぶりの楽との口付け。強烈な甘い刺激は、私の脳を溶かしていくようだ。
しかし。あの時と違うのは、彼がいま正気ではないということ。なんとかして、まともに戻ってもらわなくては。

私は、なけなしの理性で彼の胸板を押す。

ちょうど、その時だった。


「…は、…Lio 」

『!!』


彼は、私のかつての名を 呼んだのだ。
その瞬間、全てを悟った。

彼は今、Lioとキスをしているのだ。

夢の、中で。


それに気付いたのと同時に、私は全身の力を抜いた。一切の抵抗をやめたのだ。

夢中で私の唇と舌を吸う彼を目の当たりにすると、痛いほどに伝わってくる。

楽が、狂おしいほどに 私を愛しているという事実が。

そんな熱烈な愛情をぶつけられて、胸が熱くならないわけがない。私は静かに瞳を閉じて、彼の口付けに溺れていった。


「Lio…」

『ん、ぅ…はっ…』


キスの切れ間切れ間に、楽は私の名前を口にした。


「Lio…、エリ」

『!!』

「は…、愛し てる」


やがて、楽の腕の力が緩んだ。

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