第46章 貴方達となら、また
『また…こんな姿を、晒してしまった。貴方に見られたくはなかった。貴方達の前では、いつだって男前の春人でいたかったのに』
「俺は嬉しいよ?どんなに恥ずかしくて、情けない君だって。また、春人くんの柔らかい部分を見られて嬉しい。
今の君は…まるで、か弱い女の子みたいだ」
そう言って龍之介は、再び私を抱き締めた。彼の肩口に、頭を預ける。
『そう、思われるのが嫌だったって。分かっていて言ってますか?』
「ごめん。でも俺は、君のこういう弱い部分も 好きなんだ」
『私は、自分のこういう弱い部分が嫌いです』
そっと瞳を閉じれば、また瞳からは雫が溢れた。そんな様子は彼に見えていないはずなのに。まるで慰めるように、私の髪を彼は撫でた。
「ねぇ、春人くん。
もし君が、大切なものを失くしてしまったというのなら。俺が代わりに見つけてあげる」
『!!』
「どれだけ時間がかかっても。どれだけそれが困難でも。俺が絶対に探し出して、届けるよ。君の元に」
彼の言葉は、夢の中の話や、例え話なんかじゃなくて。強い意志と現実味を孕んでいた。
私は震える両手で、彼の背中を掴んだ。服がシワになってしまうのもいとわずに、強く。強く。
『私も…私も、一緒に。
貴方達となら、また 見つけられそうな 気がします』
「うん。一緒に、探しに行こう。
大丈夫だ。きっと。俺達が一緒なら」
そう言って、彼はより強い力を腕に込めた。
『私は、こんな私は嫌いです。でも、龍がこんな私を好きだと言ってくれるのなら…
もう少しだけ、このまま。貴方の腕の中にいても、良いですか』
「勿論だよ。
君が、今度は良い夢が見られるようになるまで…。いや、違うな。いくらでも、どれだけだって抱き締めていてあげる」
私は、彼の甘い体温を貪るように 体を預け続けた。そして、ようやく落ち着いてきた気持ちを自覚した。
でも、もう少しだけ、このままで。
明日には、いつもの私に戻るから。貴方達がよく知る、春人に戻っているから。
後もう少しだけ、ただの弱い女でいさせて。
『ありがとう。龍』