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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第46章 貴方達となら、また




自分が歌えないのに、他人の歌なんて聴いたって 嫌な気分になるだけでしょう?

Lioは、半年前に死んだ。もうどこにもいない。

ならば、どうして私は未だ、この場所にいる?


彼女の歌を前にしたら、これらの気持ち全てに答えが出た。
ミクの真っ直ぐで純粋な歌声が、私に答えを与えたのだ。


嫌な気分になる?
なる訳ない。彼女は、ミクは、人を幸せにする為に歌っている。
どうしようもなく傷付いた人間の心を癒す 綺麗な歌声は、私の心にも染み込んでいった。

死んだと思っていたLioが、こんなところに いた。メジャーデビューこそ出来なかったが、今ここで。ミニ遊園地の特設ステージで歌っている。
ミクという女の子に姿を変えて、人を幸せにしようとマイクを握っているではないか。

私がここにいる理由なんて、1つしかないだろう。
それは、私が歌を愛しているから。
音楽の側でしか、私は生きられない。



「ぴえろさん?ぴえろさん、どうしたの?だいじょうぶ?」

「どこか、いたいの?どうして、ないてるの?」

『〜〜っう、…ふ、……くっ、』


どこも、痛くなんてない。むしろ、今まで痛かった胸の傷が 癒されていくのを感じた。

情けない。どうして私は、忘れていたのだろう。いま、思い出した。

私は、こんなにも 歌を愛していたのだ。



「エリさん、ありがとうございました。私の歌、あんなに沢山の人に聴いてもらったの初めてなんです」

『そう。良かった』


腫れた目を隠す為に、私は俯いて彼女と話をした。

すると、下ろした視界に 誰かの靴が入り込んだ。私は驚いて顔を上げると、そこにはさきほど叩き起こしたサラリーマンが立っていた。

まずい。乱暴に起こしたせいで、クレームでも入れられてしまうのだろうか。
思わず身構える。

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