第46章 貴方達となら、また
「そ、それは怪獣さんのピンチですね!」
そう言って、ミクはなんと目の前の怪獣を応援し始めた。当然、ヒーローを応援していた子供達からは白い目を向けられる。
応援されている当の怪獣も、どうしていいのか あたふたし始めた。
『ふ、ふふ。ちょ、ミク。それは良くないよ。見て、怪獣、困ってるから。ははっ』
「エリさんっ、笑うと、ますます美人さんですね!」
『!!
私…いま笑ってた?』
「はいっ!とても楽しそうに」
私はミクから視線を外してから、そう。とだけ呟いた。そして、天を仰いだ。
視界いっぱいに広がった空は、今日も青かった。
『これ、あげる』
「え?いいんですか?」
『私は、もう1つ食べたから。お昼、まだでしょう?』
「は、はいっ!ありがとうございます」
彼女は、笑って手渡したメロンパンにパクついた。そして、美味しいです。と言ってまた笑ったのだった。
数時間後、いよいよミクのステージの時間は すぐそこまで迫っていた。
しかし、観客は2人。それも、席を手頃なベンチとして足を休めている老人と、仕事をサボって居眠りをしているサラリーマンだ。
私は、奥歯を噛み締めた。
彼女のプロデューサーは、今日のステージに対しプロモーションを行ったのか?有料コンサートでもなく、無料で聴けるステージだというのに。さすがに、もう少し人が入っても良いだろう。
ここまで考えて、はっとした。
私が、彼女の歌を 大勢の人に聴いて欲しいと願っていることに。