第46章 貴方達となら、また
《どう?新しい職場は》
『それなりにやってます。先輩、食い扶持を紹介してくれて ありがとうございます』
《食い扶持って…。まぁ、馴染めてるなら良かったわ。また日本に帰ったら、連絡するから元気でやるのよ》
『色々と、お世話になりました』
もう、死んでも良いと思う事もなくなっていた。それくらいには、精神衛生は回復したといえよう。
しかし、ただそれだけだった。
歌を失ってから、ぽっかりと空いた心の穴。それは一向に塞がる気配は見えない。
むしろ、どうして自分がまだ この業界にしがみついているのか理解が出来なかった。
いっそ、全く違う職業に就いた方が良いのでは?という思いは日に日に強くなっていた。
《あ、そうだ。エリちゃん、八乙女楽って覚えてる?》
遠いところへやっていた思考が、MAKAの言葉で引き戻される。
『覚えていますよ。あの顔だけおと…』
(危ない、仮にも先輩の彼氏なんだったな。彼女本人に、あの顔だけ男。は、流石にまずいだろう)
《??》
『あの顔面が綺麗な男の人ですよね。覚えてますよ』
《そうそう!その楽なんだけど、最近うるさいのよ。Lioはどこに行ったんだって。
“ お前はLioのダチなんだろう!Lioが今どこで何をしてるのか言え! ” って。もうとにかく、Lio Lio喧しいの何のって。
やっぱり言ったらヤバイよね?エリちゃんがLioで、いまFSEで勤めてるって》
私は、MAKAが目の前にいる訳でもないのに大袈裟に首を振った。
『絶対に言わないで下さい。
あと、先輩。彼だけでなく、他の誰にも Lioについては公言しないで貰えませんか。
もう、彼女は…どこにもいないんです。このまま誰に追われる事なく、どうかそっと 消え去って欲しいんです。この世から。全ての人の 記憶の中から』